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数字記憶法1―語呂合わせと記憶術

記憶能力測定に適した数字記憶  暗記競争に大きな差がつく「記憶力」以外の要素
瞬間記憶と長期記憶  数字語呂合わせは運とアイデア力に左右される
イメージを利用する記憶術

記憶能力測定に適した数字記憶

 数字の記憶は、現代ではあまり必要とされなくなったかもしれません。電話番号はケータイに登録しておけば済むことですし、各種試験対策でも数字の記憶が必要なものはほんの一部に過ぎません。

 数字の丸暗記が意味を持つのは、脳の記憶能力を客観的に測定するときくらいでしょうか。
 それ自体に意味のない数字は、知識や経験、理解力、直観力などを利用できないため、純粋に機械的な記憶能力を測定するのに向いているのです。

暗記競争に大きな差がつく「記憶力」以外の要素

 数字の記憶法を論じる前に、言葉などの記憶が機械的な「単純記憶力」以外の能力に依存している(!)という事実について触れておかなければなりません。学校の勉強が苦手という人でも、単純に「物覚えが悪いから」ということではないということが納得できるでしょう。
●すでに獲得している知識の差
 ほとんどの方にとって常識かもしれませんが、さまざまな言葉を丸暗記する際、すでに獲得している知識の多少で、覚えるスピードや確実性に差が出てくることは確かです。たとえば、「野菜の名前を20個覚えるのは簡単だが、アフリカの都市名20個を覚えるのはその何倍かの時間がかかる」というようなことです。
●理解力や読解力の差
 学校の勉強では、物事に対する理解力や文章読解力によって、記憶に差が生じてきます。理解できないことを覚えるのは、何倍も努力が必要になってくるのです。
●好奇心や知識欲の差
 好きなことはすぐに覚えられますが、興味のないことはなかなか覚えられません。これも常識です。
●報酬が得られるか得られないかの差
 報酬の有無によって、集中力に大きな差が生まれ、記憶に影響します。報酬とは、できると何かがもらえる(即物的)とか、試験に合格する(将来の実益)とか、一番になる(名誉)というようなものです。なお心理学では、好奇心を満たすことも「自分への報酬」と考えるのが常識です。

瞬間記憶と長期記憶

 以上に述べてきたように、数字の記憶は、理解力、読解力、好奇心、知識欲、報酬などの有無に左右されず、純粋に記憶能力を競うのに向いています。

 数字は量を表す記号ですが、それ自体に意味がないので、言葉に比べて覚えづらいのが特徴です。
 たとえば、「8桁の数字」と、「東京都の電話番号」という8文字を覚えるのとの違いを考えればわかります。言葉は瞬時にイメージできますから、覚えるのは簡単です。でも、乱数表から任意の数列を抜粋した次の数字はどうでしょうか?
 57583471 
 この数字を覚えるとき、ほとんどの人は「ゴーナナゴーハチ、サンヨンナナイチ」と頭の中で唱えるのではないでしょうか。長音を除いても14文字になる無意味な音節の配列は、一度唱えただけでは覚えきれない人もいるかもしれません。

 もう少し利口な方法として、「ゴナゴヤサシナイ」とすれば、情報量は半分近くに減り、覚えやすくなります。しかし、これでも意味のない呪文であることには変わりなく、数秒の瞬間記憶はできても、1時間後、あるいは翌朝まで記憶を持続(長期記憶)させるためには、相当の繰り返しが必要になります。

 なお瞬間記憶に限れば、珠算の暗算の達人にとっては、零点何秒かで10桁くらいの数字を頭に映像として焼き付けることは、難しいことではないようです。

 しかし、いずれの場合も長期記憶となると、別の方法で記憶するしかありません。そこで、たいていの方が語呂合わせで覚えようとするのではないでしょうか。

数字語呂合わせは運とアイデア力に左右される

 上の数字で語呂合わせを試みると次のようなものが考えられます。

 57583471=「小女子(こうなご)破産しない」
 あるいはもう2案…「G0!名古屋さん市内」 「イナゴや、見よ、ない?」

 どれも意味的に苦しく、「√3=人並みにおごれや」レベルの傑作は望むべくもありません。
 しかも、桁数が多くなるにつれて、奇妙キテレツな日本語を暗記する労力が増えることになります。

 このように、電話番号などを語呂合わせで覚えようとしても、いつもうまくいくとは限りません。
 創造力豊かな知恵とともに、多少の運が必要になるからです。上の数字の配列はさほど運のいい配列とはいえないようです。

 結論として、語呂合わせ法は数字記憶にある程度有効ですが、運とアイデア力に左右されるという意味では、効率のよい記憶法とはいえません。
 そこで次に、記憶術による数字記憶法を見ていくことにしましょう。記憶術では、語呂合わせの限界を「イメージを連結する方法」によって見事に解決しています。

イメージを利用する記憶術

 記憶術では、語呂合わせもテクニックのひとつとして使いますが、それは記憶術のほんの一部に過ぎません。記憶術が普通の記憶法と決定的に異なるのは、イメージや連想力を利用することです。
 ここでは、誰もが自然に身につけている数字語呂合わせ法をそのまま使って、記憶術に応用する方法を公開します。
テクニック1 数字は2桁ずつイメージ化する
 数字の語呂合わせは桁数が多くなるにつれて、自然で覚えやすい日本語を作るのが難しくなります。 そこで、記憶術では数字を思い切って2桁ずつ区切ります。2桁ならどんな数字の配列でも簡単にやさしい単語が頭に浮かびます。

 たとえば、先ほどの8桁の数字は次のような4つの単語の配列となります。
57583471 ⇒ 57・58・34・71
            (粉・小屋・刺身・ナイフ)
テクニック2 イメージ変換した単語同士を連結してストーリーを作る
 イメージ化した単語(粉・小屋・刺身・ナイフ)は、このままでも自然に覚えられるかもしれませんが、記憶術ではこれを順番に連結してストーリーを作り、頭に焼きつけます。
 たとえば、上の4単語を記憶術の手法でストーリー化すると、次のようなイメージになります。
@(大量の)粉が小屋に降り注いだ。
A小屋の中には、(巨大な)刺身が横たわっている。
B刺身をナイフで切り裂いた。
 イメージはできるだけ派手に、現実にはありえない光景として頭に描くのが記憶術のコツです。
 なお、忘れにくいイメージを素早く頭に描くにはいくつかのテクニックがあり、本格的な記憶術を修得するにはそれなりのトレーニングが必要となります。
テクニック3 桁数が多い場合は「順番を絶対に忘れないリスト」に結びつける
 テクニック2ではクサリのようにイメージを連結しましたが、桁数が多い場合は、あらかじめ用意した「順番を絶対に忘れないリスト」にひとつずつイメージ同士を結びつけて覚えます。

 そのリストでは多くの場合、場所や道順が利用されます。たとえば次のようなものです。
@自宅の玄関 A犬小屋 B花壇 C門 D生垣 Eお隣さん ……
 このテクニックは、数字記憶法に限らず、記憶術では最も重要な方法です。リストの作り方、リストの迅速かつ確実な覚え方、リストの増やし方などにもそれなりの技術があります。

 最後に、語呂合わせによる数字のイメージ化は、2桁なら誰でも何とかできると思いますが、その選択肢は少なく、常に同じ単語(イメージ)が登場するという欠点があります。
 本格的な記憶術とするには、イメージの混同を避けるために、数字のイメージ変換に工夫が必要となります。
                                   (記憶術研究家高山 瞭
 次へ進む(数字記憶法2―数字変換法の発展・多様化)

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