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数字記憶法2―数字変換法の発展・多様化
ここでは、数字をいかに効率よくイメージ化するかという問題に絞って、多様化した数字変換法の長所、短所などに触れつつ、その方法を解説してゆきます。
まず始めに、古代ギリシャで生まれ、ヨーロッパで発展してきた記憶術の歴史に敬意を払って、欧米の数字記憶法から紹介していくことにします。
欧米の数字記憶術
●子音置換法
欧米では、子音置換法と呼ばれる、数字をアルファベットに変換する方法が一般的にとられています。
| 0 |
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
| s,z,c |
t,d |
n |
m |
r |
l |
sh,,ch,j,g |
k,c,g,ng |
f,v,w |
p,b |
数字の変換ルールは日本人には一見してわかりづらいのですが、注意深く見ると、覚えやすさと造語力の両面から考えられており、きわめて合理的なものです。
たとえば、0(零)はZEROですが、スペイン語、イタリア語ではZがSの発音になるため、Sが加わり、さらに同じSの発音をする場合のCも仲間に入っています。
ちなみに、7のCはKの発音になる場合に使います。また、6のGはJの発音、7のGはGodのGです。
文字の形から連想されるものには、tとd=一本足、n=二本足、m=三本足があります。9がp,bになるのも説明不要でしょう。
|
実際の運用法
母音を無視してイメージしやすい単語を作ります。
たとえば、「14=deer」「92=piano 」というような要領です。
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なお、上の表は英語圏で使われるもので、言語が変わると子音の読み方などが変わるため、細かい部分では置換法は若干変わってきます。
また、記憶力世界選手権の優勝者の中には、子音置換法とはまったく異なる独自のシステムを提唱している人もいます。「1=A」「2=B」「3=C」…「6=S」…「0=O」などとする方法で、2桁区切りのイメージ変換に歴史上の人物や有名人(イニシャル)を当てています。
五十音式数字変換法(渡辺式)
五十音式数字変換法は、数字の1、2、3…をあ行、か行、さ行…に順番に当てはめていく単純なもので、欧米式の子音置換法の機械的な援用ともいえるものです。
提唱者は渡辺式で有名な故渡辺剛彰氏です。
| 0 |
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
| わ・ん |
あ行 |
か行 |
さ行 |
た行 |
な行 |
は行 |
ま行 |
や行 |
ら行 |
※濁音、半濁音は点やマルを取った文字に還元します(が→か、ぱ→は)。
この方式の長所は、理論的で、理解するだけで覚えられることです。
とはいえ、瞬時に数字を言葉に変換する場合、人によっては5〜7(な行からま行)がスムーズに行かないこともあるかもしれません。反応を早くするためには、多少のトレーニングは必要となります。理論的であるが故の短所といえるでしょう。
しかし、近年は携帯メールでの文字入力に慣れた人も増え、数字を無意識レベルで文字に変換することに困難を感じない人も多いのではないでしょうか。
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実際の運用法
11=アイロン 47=タマゴ 92=ラクダ
9247(イメージ例)=ラクダのこぶに大きなタマゴをかぶせた
|
渡辺式の改良型
機械的な五十音・置換法は、語呂合わせよりは数段、造語力が増したとはいえ、や行、ら行、「わ・ん」などの組み合わせでは、作れる単語が少なく不自由な面があります。
実用的にはまったく問題ないのですが、数字記憶は実用を離れたゲームの要素が強いものです。 競技会では機械的な五十音・置換法は少し不利になるでしょう。
そこで次のように部分修正すると、造語力が飛躍的に増します。
●「お」を例外的に「0」とする
無理のない例外措置で、0を「わ・お(を)・ん」の3枚看板とすれば、かなり単語は増えます。
●「く」を例外的に「9」とする
大和言葉には元来、「ら」から始まる名詞はなく、9の変換は不自由です。「く」が加わることで解決します。
このように語呂合わせ法を一部に導入すれば、使い勝手はよくなります。ただし、しっかりトレーニングをしないと、とっさの場合にうっかり間違えてしまうことがあります。自分流に改良する際は、例外を増やしすぎないことです。
語呂合わせ改良型
語呂合わせは、自然に身についた生理的な言語感覚に基づくものですから、その点では五十音式よりも優れています。ただ、言葉を作るのが極端に制限されるのが欠点でした。そこで人によってはやや自然さが弱まりますが、語呂合わせに中国語と英語が導入されることになりました。
次の表は数字語呂合わせのうち、2文字のものを除いた一般的な変換例です。一段目は日本語、二段目は英語(カタカナ)と中国語(ひらがな)です。0は例外的に、その形から「わ」も加えています。
| 0 |
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
| れ |
いひ |
にふじ |
さみざ |
よし |
こご |
ろむ |
な |
はぱばや |
くぐ |
| オわ |
テ |
ツ |
|
ホす |
う |
|
セち |
エ |
|
英語と中国語が加わることにより、単純な語呂合わせよりは単語が作りやすくなっています。2桁区切りを基本とする記憶術を使うなら、実用的にはこれで十分でしょう。
それでも、機械的な五十音法と比べればまだかなり造語力が弱いので、大量の数字を覚えなければならない場合、イメージの混同を避けてさまざまな単語に変換する必要に迫られると苦労するでしょう。
語呂合わせ+形+似た発音(友寄式)
語呂合わせ法を出発点としながら、いかに造語力を強化するか。つまり、語呂合わせ法では使っていない文字をどのように自然に分配するかということになりますが、それに成功したのが円周率暗唱で有名な友寄秀哲氏の数字変換法です。
友寄式では、@日本人が慣れている読み(語呂合わせ)、A英語および中国語から(語呂合わせ)に加えて、B字の形から連想、C似た発音から、Dバランス、という5本立てで五十音と濁音、半濁音を配列しています。
このうち「字の形から連想」は次の4文字です。
・マ=0(丸いの意) ・ト、ノ=1 ・ユ=2
その他の文字は、@からBまでで配置された仮名に似た発音が、無理やり当てはめられており、苦心のあとがうかがわれます。
最後の「バランス」は「ア」が1文字だけが残され、割り当ての少ない「5」に配置されています。
次に、似た発音の例を少し挙げておきます。
・1=デ、ド、ビ ・2=ブ、プ 3=ソ、ゾ ・4=ポ、ボ (以下省略)
友寄式は、語呂合わせ法を基盤にしているため、ある程度の自然さを残しながら、造語力を飛躍的に高めています。
ただし、「似た発音」や「字の形」に関しては、感覚的な個人差が大きく、ぴんと来ない人もいるでしょう。また、瞬時に数字を仮名に変換するにはかなりのトレーニングを必要とするため、試験対策などの実用目的で身につけるには負担が大きすぎるという欠点があります。
しかし、造語力は五十音式(渡辺式)やその改良版に比べても、かなり高くなっています。
円周率暗唱に特化した数字10桁区切り
2文字区切りでイメージを連結する記憶術では、「語呂合わせ改良型」もしくは「機械的な五十音式」で実用的には十分だということは、すでに述べました。
友寄式は実用を超えた記憶術、つまり円周率暗唱の世界記録を目指したがゆえに、苦難の道を歩まざるを得なかったと考えられます。
具体的には、記憶術では常識的なセオリーである「数字の2ケタ区切り」を放棄して、「10桁区切り」を採用せざるを得なかったことです。
これは、暗唱数字の桁数が5千桁を越えたあたりから、2桁区切りでは技術的に難しくなるからです。記憶術ではイメージ変換した言葉を「絶対に順番を忘れないリスト(渡辺式ではこれを基礎表と呼ぶ)」に結び付けて覚えるのですが、この基礎表の数を増やすのがだんだん困難になるのです。
10桁区切りで数字を言語化(イメージ化)できれば、同じ基礎の数で覚えられる数字は5倍に増えます。
しかし、10文字の変換は、単語が句や文になることを意味します。友寄式数字変換法なら、何とか10文字の意味のある句や文が作れます。しかし、それは多くの時間とアイデア、工夫が要求されます。
10桁変換は、覚えるのに時間制限のない円周率暗唱だからこそできる方法です。制限時間内に記憶した桁数を競ったり、記憶に費やしたタイムを競ったりする記憶力競技では、2桁区切り以外の方法で勝つことは不可能だと断言してもよいでしょう。
なお、円周率暗唱の世界では、10桁区切りどころか、20桁、50桁、100桁単位で数字変換をしていくことも理論的には可能で、現にそうしている人もいます。職人的な数字変換のひらめきと、情熱に支えられた忍耐力が要求される作業ですが…。
五十音・語呂合わせ併用法の可能性
五十音式の明快な合理性と、語呂合わせ法の言語生理学的な安心感。この両者の長所を組み合わせたらどうか?
「ハイブリッド車」的な発想ですが、下手をすると「アブハチ取らず」になりかねません。桁数の多い数字の文章化が可能な、無理のない変換法を目指します。
●ハイブリッド数字変換 《試案》
・五十音法を基本にして、例外的に語呂合わせ文字を移動させます。
・1、3、4、9は五十音法と同じにします。
・6、7、8は数字の発音を考慮し、変換する行を変えてみます。
・2と0には行の割り当てを設けず、語呂合わせや文字の形を主体にします。
・強固に定着した語呂合わせは、五十音法の原則から除外します。
・や行には数字を割り当てません。また、「へ」も調整のため上記原則から外します。
| 数字 |
基本原則 |
原則の例外規定 |
語呂合わせを追加した最終案 |
| 1 |
あ行 |
お→0 |
あ、い、う、え、ひ、と、ど |
| 2 |
(語呂合わせ) |
|
に、ふ、つ、ぶ、づ、ゆ(調整/ユ=2) |
| 3 |
さ行 |
し→4 |
さ、す、せ、そ、ざ、ず、ぜ、ぞ、み |
| 4 |
た行 |
ち→7、つ→2、と→1 |
た、て、だ、で、し、よ |
| 5 |
か行、が行 |
く・ぐ→9 |
か、き、け、こ、が、ぎ、げ、ご |
| 6 |
ま行 |
み→3 |
ま、む、め、も、ろ |
| 7 |
な行 |
に→2 |
な、ぬ、ね、の、ち、ぢ |
| 8 |
は行 |
ふ→2、へ→9 |
は、ひ、ほ、ば、び、ぼ、ぱ、ぴ、ぽ、や |
| 9 |
ら行 |
ろ→6、れ→0 |
ら、り、る、く、ぐ、へ(調整/くを横) |
| 0 |
(わをん) |
|
わ(形からも)、を、ん、れ、お(英) |
五十音式およびその改良型では、な行以下の同じ行の組み合わせが幾分不自由でしたが、ハイブリッド式ではそれが完全に解決されています。そのため、数字の文章への変換も楽になっているはずです。
欠点としては、友寄式同様に無意識に数字変換できるレベルになるまでには、それ相当のトレーニングが必要なことです。数字変換は、造語力を重視すればするほど、瞬発力獲得の道のりが遠くなる運命なのです。
しかし、ハイブリッド式は2ケタ区切りに限れば、太字部分のなじみのある語呂合わせ式のみを採用すればよいので、ムダはありません。
上の試案を元にアレンジや微調整を図り、自分の感覚に合ったものを作れば、よりよい数字変換表ができるでしょう。
ひとつだけ注意があります。数字変換法は、一度それで覚えてしまうと、なかなか変更ができません。記憶を消すのは、記憶を定着させること以上に難しいことなのです。
最後に繰り返しますが、試験対策などの実用目的のみに数字記憶法を使うなら、五十音式(およびその改良型)か語呂合わせ改良型のどちらかを身につけるのが合理的です。
また、実用的な数字記憶術では、日付や小数、分数、単位(記号)などのイメージ変換も必要になってくることがあります。それらのイメージ変換ルールは、数字の変換方法とは別の発想で考えなければなりません。
いずれにしても、数字記憶術は「イメージとイメージを連結して脳裏に焼き付ける」という作業を伴いますから、本格的に使いこなすためには、イメージによる記憶術の基本トレーニングが必須となります。
(文: 記憶術研究家 高山 瞭)
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