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俳句の楽しさ―17文字の言葉遊び

 俳句には3つの約束事があるけれど…    俳句の魅力は句会にあり

 俳句は始めてみるとなかなか楽しいものです。近年は女性にも俳句を作る人が増えてきました。

 俳句といえば、「古池や蛙飛び込む水の音」の句が真っ先に連想されます。昔は、花鳥諷詠や仏教的な無常観を表すのが俳句とされていました。そのため、必要以上に高尚なイメージを持たれてきたことは否めません。

 でも、俳句を17文字の言葉遊びと考えたらどうでしょうか。「ちょっと、それは軽すぎる」という識者もいらっしゃるでしょうが、標語や広告のキャッチフレーズを考える感覚で、短い言葉の中に自分の描いたイメージを凝縮する作業は楽しいものです。難しいことは考えず、まずは楽しさを発見することが、何を始めるにも大切なことだと思うのですが…。

 俳句を作るということは、無限に近い言葉の組み合わせの中からぴったりの言葉を捜すことです。その間に脳の血流は、言語脳(左脳)とイメージ脳(右脳)、そして前頭葉を駆け巡ります。俳句を楽しむことは、大脳全体の活性化につながるでしょう。

 老若男女を問わず気軽に楽しめる文芸は、世界広しといえども俳句しかありません。その上、脳力トレーニングにもなる俳句ができるのは、日本語を母国語とする私たちの特権といってよいでしょう。

俳句には3つの約束事があるけれど…

 俳句にはいろいろな約束事があります。基本となるのは3つだけですが、この約束事が俳句の門を狭くしている面もあります。でも、次に説明するように、初めからあまり細かいことにこだわる必要はないのではないでしょうか。

五・七・五のリズム

 まず第一の約束事は、五・七・五の定型詩でなければならないことです。指を折り曲げながら言葉の数を数えた子供の頃を思い出す方もいらっしゃるでしょう。
 リズムに合わせて言葉を捜すのは難しいように見えますが、私たち日本人は交通安全や火災予防などの標語を作るとき、無意識に五・七・五のリズムで作っていることがよくあります。日本語の構造が五七調や七五調になりやすくできており、日本人が心地よさを感じるリズムなのかもしれません。

 ところで、五・七・五のリズムは絶対ではありません。歴史に残る俳人の句の中にも、字余りや字足らずは「例外」としてはかたづけられないほど多く遺されています。「やむを得ず」というよりは、むしろ表現上の理由で積極的に「約束事」を破ったものと解されます。

 有名な「旅に病んで 夢は枯野を 駆け巡る」も字余りです。字余りを避けるなら「旅に病み〜」ですが、これでは芭蕉先生は納得できなかったのですね。 

 五・七・五のリズムは、間に2か所間合いがあり、最後に余韻となる無声音が入っていると考えることもできます。すると字余りは、その間合いまたは余韻が1拍短くなったにすぎません。また、字足らずは、間合いもしくは余韻が一拍増えたことになります。リズムが根底から崩れるわけではありません。
 五・七・五の約束事は杓子定規に考える必要はないのかもしれません。

 一方、「制約があるからこそ、句がつくりやすいのだ」という逆の面も忘れてはならないでしょう。何をするにも自由すぎる状況はかえって困ることが多いものです。

季語を入れる

 第二の約束事は季語を入れなければならないことです。
 
 何が季語になるかは難しいもので、そのため季語辞典なるものがあるくらいです。季節感を表す単語は時代や地域によって異なる上に、四季の認識が旧暦と新暦では異なります。また、季重ねといって、一つの句に季語がダブってはならないという「俳句の基本」もあります。季語のことを考え出したら頭が痛くなる、という人もいそうですね。

 でも、季重ねについていえば、大家の句にも例外的に季重ねになるものが見られます。初めからあまり細かいことで萎縮する必要はないでしょう。

 そもそも現代俳句には、季語は要らないという考え方もあります。かの芭蕉も旅や恋愛など、テーマによっては季語がなくてもよいと語っていたそうですから、大家にもいろいろな考えがあるようです。

 季語を絶対条件と考えれば古典的な花鳥諷詠を目指すことになり、それはそれで美しい世界です。そして、そこから飛び出した自由な世界もまた俳句の魅力であります。どちらを目指すか? それは初めから決めるべき問題ではありません。

切れ字について

 第三の約束事は必須ではありませんが、俳句には「や」などの切れ字が入ることです。

 冒頭の「古池や〜」の句は、「古池の」とか「古池に」とした場合の違いを考えれば、「や」の素晴しい効果がわかる仕組みになっています。

 しかし、何でもかんでも「○○や」とすればいいものではないようです。時には「〜や」と句を切ってしまうよりも、「〜の」などであとの言葉につながるほうがよい場合もあります。どちらがよいかを推敲するのも、俳句のよりレベルアップした楽しみ方の一つです。

 余談ですが、同じ五・七・五の文芸でも、川柳には「や」とか、末尾の「かな」が入った句をほとんど見ません。「や」や「かな」の働きを考えると、両者の違いが少しわかりそうです。大雑把にいえば、俳句は感性、川柳は知性が勝っているのかもしれません。

俳句の魅力は句会にあり

 詩歌やエッセイ、小説などは独りで行う孤独な作業です。作品が印刷されて人に読まれることに作者の喜びがあるわけですが、俳句の場合は事情が異なります。それは他の文芸にはない句会というものがあることです。

 句会では参加者は、自分の句をみんなに読んでもらい、お互いに批評し合います。署名なしなので先入観や気兼ねなどなしに感想を述べることができます。

 文芸作品というものはひとたび手を離れると、作者の意図したものとは違う読み方をされることが普通です。そのため思いがけない採り上げ方をされたり、自分では気がつかないことをほめられたりすることがあります。もちろん、自信作なのに反応がいまいちということもあるでしょうが、つくった句にすぐ反応が直接返ってくる醍醐味は句会特有のものです。

 複数の人の間での言葉遊びは、ある意味では一種のゲームとなります。文芸でありながらゲーム性を備えた俳句は、その意味でも脳を鍛える最高のトレーニングといえます。

 句会を通して仲間と絆を深めることができることが、俳句の最大の魅力かもしれません。
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